現在、トヨタや経団連など、大手の企業からも「終身雇用を維持するのは難しい。」という発言が出てきており、従業員の雇用環境は大きく変わってきています。
しかし、「正社員が安定で非正規社員が不安定」というイメージもあり、雇用に対する一般的な認識と現実にギャップが生じてきているように感じます。
今回、M&Aコンサルタントとして起業した中村亮一氏に「雇用に対する考え方と正社員が安定で非正規社員が不安定という通説」というテーマでインタビューを行いました。
従業員を雇用することについての考え方、雇用する側と雇用される側の視点について、正社員が安定で非正規社員が不安定という通説について、正社員での雇用に対するイメージとのギャップなど、お話を伺っています。
現在の雇用環境に問題を抱えている方、正社員と非正規社員という雇用体系に対して不安や心配をおぼえている方の参考になれば嬉しいです。
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従業員を雇用するということ
「正社員を1人雇用するのに最低でも時給2000円以上はかかるから、リスクが高い。」っていう話を聞いたことがあります。
確かにそうかもしれないですね。本当に従業員を雇用している会社は尊敬します。
これから、どんどん従業員に支払う給料周りのコストが上がっていくんですよね。だから、大変だなと思っています。
今の法律だと会社側が守られていないから、非正規雇用が増えていると聞いたことがあります。
そういう状況を見て、どう思いますか?
雇用されている側の視点も、経営者側の視点もあるわけじゃないですか。
そのハイブリッドな視点を持って、この状況をどう見ていますか?
日本の経済を回復させたいのであれば、雇用している側が人を雇いやすい仕組みにした方が、会社と経済が潤うと思うんですけどね。難しいですね…
仕事をしていると、そういう雑談をすることもたくさんあるんですよ。
経営者から「こういうテーマについて、どう思う?」って聞かれるんですよ。
昔、金融にいましたし、コンサルの業界にもいたので、「どういう風に見ているのか教えてほしい。」って言われることもあったりして、突然ふられた話題にも何かしら話をしないといけないわけですよ。
今、ミスりましたね。(笑)
合っているか間違っているかは、どうでもいいんですよ。
合っているか間違っているかは、その場ではまったく判断ができないんですよね。
だから、自分の意見というものをどこまで言えるのか、自分の意見をどこまで「後ろ盾」を持って言葉にできるかどうかっていうのが、とても大事ですよね。
ちなみに、「後ろ盾」っていうのは「こういうデータがある。」とか「こういう状況がある。」っていうのを説明した上で、「だから、自分はこう考えているんだ。」っていうのを言えるかどうかということです。
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雇用する側と雇用される側の話
最初に話をした、雇用する側と雇用される側の話ですけど、中村さんはどう思いますか?
もう少し、雇用する側にも権利が欲しいというか、パワーバランスでいう「パワーが欲しいな。」っていうのは正直なところですよね。
最悪、事務作業はどんどん省力化のもとに、いろんなソフトウェアだったり、ITサービスだったりに置き換わっていくわけですよ。
そうすると、人がいらなくなる現実がありますよね。
でも、「採用してしまったら、解雇できないから置いておく。」っていうのは、企業側にメリットがないですよね。
そこにかける人件費は浮かさなければいけない。
でも、そこで浮いた人件費を、自分達が持っているコアな事業の人を採るところに使えるとしたら、新しい雇用を生むかもしれない。
つまり、「人の配置転換をできる可能性を残す。」という意味でも、そこはもう少し雇用側にもパワーが欲しいなと思います。
でも、雇用側にパワーを与え過ぎてしまうと、「なんでもかんでもクビを切ればいいや。」ってなってしまうので、それはそれで問題ですよね。
そうすると、働く側は安心して働けないですし。
安心して働けないからビクビクするし、言いたいことを言えなくなるかもしれないし、そうすると組織が不活性化する可能性があるので、それは良くない。
ただ、今はどう見ても雇用される側、労働者側が権利を強く持ち過ぎているので、そこをもう少し緩やかにしてほしいなと思います。
「急に緩和してほしい。」ということではなくて、もう少し緩やかにして欲しいという気持ちはありますね。
たとえば「1年間の給料を払うから、退職金として辞めてもらったり」とか、「会社が斡旋して、次の就職先を見つけてきてから辞めてもらう」とかであればいいと思いますよ。
今後、人を雇用していく事は考えていますか?
考えています。最近は採用面接もしています。
今もインターンの方には来てもらっていて、インターンよりももう少し進んだ形で、業務委託とか社会人アルバイト的な人を採ろうかなと考えています。
「副業としてやってみたい。」っていう人がいるので、「そういう人に働くチャンスを与えたい。」と思っていて、最近は面談をやっていたりします。
ただ、正社員としての雇用は考えていなくて、部分部分での採用を考えています。
今後は世の中としても、「そういう働き方がもっと進めばいいな。」っていう気持ちのほうがありますね。
「正社員が安定、非正規社員が不安定」という通説
「正社員が安定、非正規社員が安定ではない。」っていうのは通説ですかね?
正規雇用が安定でもいいですよ、でも「潰れそうな会社の正規雇用と、安定している会社の非正規雇用は、どっちが安定していますか?」っていうことも、切り口としては言えるわけですよね。
だから、「安定・安定じゃない」っていうのは、一口では括れない話なんですよ。
それをあたかも「正社員が安定で、非正規が不安定だ。」って言ってしまっていること自体、どうなんでしょうか?
なぜかというと、日本の企業の99%が中小企業なんですよ。
みなさんが見ている「正規雇用ですごいなぁ。」って言っている人達は、あくまで上場企業とか、残りの1%のイメージで話をしているんですよね。
自分もフリーランスで仕事をしていて「フリーでやっている。」って言うと、人の見る目が変わったり、「正社員で働いている。」っていうだけで安定感とか安心感を感じているって、すごいことだなと思います。
そういう作られたイメージが、うまく刷り込まれていますよね。
ということは、正社員もいつクビを切られるか分からない状態にしてあげれば、両方不安定になるわけですよね。
つまり、「『簡単にクビを切ることができない。』っていう、雇用制限がある正社員が安定だ。」っていう背景があるとすれば、そこをちょっといじってあげればいいわけで。(笑)
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「正社員での雇用」というイメージとギャップ
会社だって、潰れたら一緒ですしね。
正社員だけれども年契約にして、「年俸制ですよ。」っていう有期の正社員にすれば、それは別に非正規雇用じゃないですよね。
みんなのイメージと実情とのギャップはありますね。
僕もM&Aの仕事を始めたのが、10数年前なんですよね。
「10数年前」というと2000年代前半なんですけど、「M&A」って今ほどは市民権を得ていなくて、「乗っ取り屋」っていうイメージがあったんです。
「何、あなた達の会社は乗っ取りに来たんだ。」って思われていたんですよね。
それが10年経って、企業がこれだけ頻繁にM&Aを行うようになってきたし、IT企業なんかは「サービスを作って、M&Aで上場企業に売却するっていうのが、いい出口なんだ。」っていうのが少しずつ定着してきました。
それから「M&Aってすごくいい経営の手段なんだな。」っていうイメージがついてきて、やっと「乗っ取り屋」的なイメージがなくなってきたんですよね。
「そこに10年以上かかっている」って考えると、言葉のイメージが一旦定着してしまうと、それが塗り変わるのは本当に大変だなっていうのはすごく感じますよね。
「村上ファンド」とか「敵対的買収」みたいな話ですよね。きっと今でも拭い去れていない人もいますよね。
ただ、新聞紙上でそういう情報が流れてきているので、例えば「1位と3位が合併して、2位に差をつけました。」っていう話には、「確かにそうだよな。」って納得できるわけですよ。
なので、「M&Aってこういう風に活用できるんだ。」っていうことが認知されてくればいいだけであって、「すべてがすべからく悪いもんだ。」っていうようなイメージがなくなってくればいいかなと思っています。
「大手の会社だから安心」というのもイメージですもんね。「絶対に安心」なんてないですもんね。
たとえばSHARPとかね。数年前はあれだけ「液晶が来るんだ。」って言って、今はこうですからね。
東芝なんかも同じことが言えますよね。
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