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日本料理屋の仕事とマネージャーから教わった接客の魅力

日本料理屋の仕事とマネージャーから教わった接客の魅力とは

「接客の仕事」とは、どういうものでしょうか?

飲食店やコンビニ、旅行代理店や不動産屋、美容室なども接客の仕事ですよね。

今回、花屋として独立した大竹ミキ氏に「日本料理屋の仕事とマネージャーから教わった接客の魅力」というテーマでインタビューを行いました。

アルバイトで入った日本料理屋で教えてもらった接客、マネージャーに叩き込まれた接客の基礎と仕事に対する想い、張さんが教えてくれた「本当の接客」のエピソードなどを伺っています。

接客の仕事に興味がある方や、これから接客の仕事に就く方の参考になれば嬉しいです。




日比谷花壇を辞めて入った織物の専門学校

織物の専門学校

昼間は織物の専門学校に通ったんですか?

専門学校みたいに「何年通う。」っていうところじゃなくて、「服地を一着分織るまでで1クール」みたいな教室があったんですよ。

機織り機の会社が、自分の会社の一角を使ってやっている教室だったんですけど、羊の毛をミックスして、色を染める、色を染めたものを混ぜて、自分で紡いで糸にする。

ハイジに出てくるペーターのおばあさんみたいな感じですよ。地道な仕事ですからね。

足で「ウイーンウイーン」ってやる、電動糸紡ぎ機で糸を紡ぎながら、機を織るっていう予定だったんだけど、結局機を織る前にいろいろあって、機を織るところまではいかず、糸の大半を紡いだところで、その教室を辞める羽目になってしまったんです。

織物の専門学校は、自分で辞めようと思ったんですか?

自分の意思とは裏腹に、辞めることになってしまったんです。自分でも予期せぬ出来事がありまして。

それで昼間は織物の専門学校に行きながら、夜は日本料理屋で仕事をしていました。




アルバイトで入った日本料理屋

アルバイトで入った日本料理屋の仕事とは

なんで日本料理屋で働こうと思ったんですか?

「今まで知らなかった世界を覗いてみよう。」と思ったんだよね。

それで、機織りにも興味があったんだけど、「着物」っていうものにも興味があったの。

「着物を着ながら仕事をする『日本料理屋』っていうのはどうだろう?」と思って、日本料理屋のアルバイトに応募したら、すぐに仕事が決まっちゃったの。

12月いっぱいで日比谷花壇を辞めました。

1月のお正月明けには、日本料理屋での仕事が始まったんだよね。「しばらくはのんびりしよう。」とか、そういう考えは全くなかった。

「失業保険もらってからにすれば?」っていう人がいたけど、失業保険をもらってのんびりしている意味が私には分からなかった。

それで、昼間は織物を学ぶ専門学校に行って、夜は日本料理屋で仕事してっていう生活が始まったんだよね。

日本料理屋の仕事はどんな感じでしたか?

その時期は日本料理屋での仕事がメインになったんです。

そこで出会った「マネージャー」っていう女の人が、すごい厳しくてうるさい人だったけど、すごく魅力的な人だったんですよ。

「自分の想いを現実化させよう。」っていう想いと仕事のやり方を、その何年間かで見せてもらった。「こんなに徹底するんだな。」って。

本当に「仕事」っていうものを勉強させてもらった感じです。

まず、一番最初に日本料理屋に入りました。

最初はお座敷には入れないから、ホールでお客さんに料理を出すんだけれども、とにかく「もっと笑いなさい、もっと笑いなさい!」って、すごく言われたの。

私はそんなに愛想のないタイプではないけども、「むやみやたらに笑えないんだな。」っていうのは、その時思ったかな。

その時に「あんたが自分の家に友達を招待したら、もっと笑って『これ何々だよ、食べな。』って言って、接待するだろう?」って言われて、「なるほど。」と思うわけですよ。

そういう、今まで当たり前だと思っていて気がつけなかったことに、いろいろ気がつけて。

マネージャーから学んだ仕事

他にはどんなことを学んだんですか?

あと、ホールでお客さんから声をかけられるまでの待ちの体勢。

その時も、別にお客さんと喋ってなかったら、顔の筋肉も下がるでしょ?それじゃ接客としてはいけないと。

「いつ声をかけられてもいいように、いつでも動ける『スタンバイOK』な状態にしておきなさい。」ってすごい言われたんだよね。

私、今まで「喋っている時と外で会った時の印象がすごい違うね。」って言われることが、すごく多かったの。

「1人でいるのに笑ってたらおかしいし。」って思ってたんだけど、たぶん顔の筋肉が下がってたんだと思う。

その筋肉が下がった状態で待ちの姿勢をしていたら、やっぱり接客としてはいけないんだなって。

「他の人がどんな状況で見ても不快じゃない状況の自分を保つ」っていうのは、接客の基本としてすごく勉強になりました。

「ニコっ!」ていう顔じゃなくても、少し微笑んでいるくらいの顔だったら、きっと嫌な感じはしないじゃない?

そういう接客の基礎をすごいマネージャーに教えてもらった。何年も何年も。マネージャーにはかわいがってもらったな。




新しい価値観をくれたマネージャー

マネージャーさんは何か強い想いがあったんですか?

マネージャーはそこの日本料理屋の人じゃなかったんだよね。

そういう接客をするチームを連れて回る、別の会社の人だったの。

企業に何年間とかの契約で雇われている人だったんだよね。「年俸いくら。」みたいな。

「そのお店を上向きにしてほしい。」っていう事で、会社から依頼されて入っていたんだよね。

一般的な派遣じゃなくて、そのマネージャーの塊が1つの会社なのよ。そこの人達がごっそりとそこの日本料理屋に入るの。よく「代行」っていう言葉を使ってたりするかな。

「代行」っていうのは、1人2人が来ることじゃない?そうじゃなくて、そこの日本料理屋の社員も一緒に混ざって、日本料理屋の社員の教育も一緒にマネージャーがするの。

でも、外部の人間が教育するわけだから、すんごい反発が生まれて、辞める人もバンバンいるの。

日本料理屋で元から雇われていたパートさん達も「こんなんじゃ私達やっていけません。」って言って、バンバン辞めていった。

そうすると、マネージャーチームで求人をするの。その求人の中で入っちゃったのが私。(笑)

接客のプロ

その人達は接客のプロフェッショナルなわけですよね?

そう。あそこのお店で接客をやって、今度はこっちのお店で接客をやってっていう。

会社も「代行」っていう名前だったかもしれない。味気もない、何もない。(笑)

とにかく「代わりに私がやりましょう。」っていうことなんでしょうけど。

だから、板場との折衝とかもすごかったもん。

板場の人たちは、もともとそこの日本料理屋の社員さん。社員さんは社員さんでも、板場のグループっていうのがあるの。親方筆頭のグループ。

社員は社員なんだよ。でも、そこの会社が雇ったのは親方。その親方が連れてる一番弟子、二番弟子とかがいるの。そういう人達が作ってるグループが、板場のグループ。

その中で、板前さん達はとにかく親方が一番。でも、そこでもマネージャーは「ああしろ!こうしろ!」とか、「早く出せ!」とか言うわけよ。

だから、「揚げ方の人に天ぷら鍋に頭突っ込まれそうになった。」とか聞いたことある。(笑)すごいよね。修羅場よ、修羅場。忙しい時は殺気立ってる。

プロ同士が仕事をしているから、どっちも引けないですもんね。

板場は板場で真剣勝負だし、接客する方はお客さん目線で見てる。

向こうは向こうの都合がある。こっちはこっちで都合がある。

「お客さんが欲しいって言ってるから出してくれ!」って。

そういう間に入ってやってるマネージャーの立ち位置。

そういう状況でもお客さんの事を想って、マネージャーは自分の想いを通す。

私たちにもすごく厳しいことを言うのよ。みんなもう泣きながら仕事をしてるの。でも、勉強になることがすごく多かった。

それがあって「『接客業』ってすごく面白いんだな。」って思った。

「接客だけで『仕事』と捉えてもいいんだな。」っていうのも、その時思ったかな。

ホテルでお勤めしている人とか、「接客」っていうのを職業にしている人達が、「すごく魅力的な仕事なんだな。」っていうのは、その時すごく思いました。

張さんが教えてくれた「本当の接客」

張さんが教えてくれた本当の接客とは

接客も大切な仕事ですからね。

その時、その日本料理屋の同僚で、中国の人が来ていたの。

研修っていうことで、1年以上一緒に仕事していたと思う。

私、若い時にタバコを吸っていたんだけど、「タバコを吸おうかな。」と思うと、その人が火をつけてくれるの。

私より年上の男の人で「張さん」っていうんだけど。

でも、「タバコに火をつける」っていう行為を、私は「どうかなぁ?」と思ってたの。飲み屋の女の人がするイメージしかなかったから、あんまりいいものと思ってなかったんだよね。

だけど、絶妙なタイミングで張さんに火をつけてもらうと、気分もいいし美味しくタバコが吸える。

「あ、こういうのいいな。こういうのがきっと、本当の接客なんだな。」と思って、「私もそういう思いを人にさせてあげられる何かができるといいな。」と思ったのは、その頃なんだと思います。

張さん、懐かしいな。

張さんは今、何やってるんですかね?

張さん、亡くなっちゃったんだって。

中国に戻って、日本料理屋の中国店にいて。事件に巻き込まれちゃったの。

張さんからもらった翡翠の石を、姉さんがずっと持ってたの。

いつか何かで張さんの訃報を聞いたのかな。「張さんからもらった石があったな。」と思って見たら、石の色が変わってたんだって。そういうことがあるんだね。

その張さんがすごくかっこいいお洒落な人だったし、「張さんのような接客ができるといいなぁ。」っていうのは本当、染みついたと思う。染み込んだ。

それで、その後は日本料理屋に勤めながら、またちょっと花の業界が恋しくなります。

それで、「毎日ぎっちりじゃないけど、花に携われる仕事がないかな?」って探した時に、ちょうど「青山フラワーマーケット」が求人していて。

花屋「花やMOMO」

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