鍼灸マッサージ師の行う「訪問マッサージ」とは、どのような仕事なのでしょうか?
今回、鍼灸マッサージ師として独立した齋藤大輔氏に「鍼灸マッサージ師が行う訪問マッサージの仕事とは」というテーマでインタビューを行いました。
鍼灸マッサージ師の仕事とはどのような仕事なのか、訪問マッサージの仕事、保険適用の仕組み、マッサージ屋との違い、鍼灸マッサージ師に治療をしてもらう方法、「訪問マッサージ」と「訪問介護」の違いなどについて、お話を伺っています。
鍼灸マッサージ師や訪問マッサージの仕事に興味がある方や、これから鍼灸マッサージ師として独立を考えている方の参考になれば嬉しいです。
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鍼灸マッサージ師の仕事
どんなお仕事をされていますか?
高齢者を対象とした訪問鍼灸マッサージをしています。
対象は高齢者なんですけど、主に「要介護・要支援」って言われている人達が、主なお客様ですね。
それ以外にも、介護保険を受けていない方もいらっしゃいます。
そういう方達を対象に、医療保険を使ったものと、実費のものがあるんですが、お宅を回ってマッサージを行っています。
「訪問マッサージ」はいわゆる出張型なので「自分の事務所から患者さんのお宅を回って、マッサージしていく。」というようなスタイルで仕事をしています。
今やっている仕事の割合的には訪問マッサージが7.5〜8割ぐらい。訪問マッサージがメインの仕事ですね。
他にはどんな仕事をされているんですか?
他にはデイサービスに行って「機能訓練指導員」っていう、リハビリとかマッサージを行う仕事をしています。
それは週1回ぐらいですね。
あとは「オーガニック整体院」というところで、セラピストとして働いたり、週末にランニングのイベントをやったりしています。
そこは個人契約・業務委託みたいな感じですね。
「セラピスト」と言っても、整体院なので基本的にやる事はマッサージです。
ただ、「マッサージ」って言えるのは僕だけなんです。「鍼灸マッサージ師」の国家資格を持っているのは僕だけなので。
周りのスタッフは整体師さんなので、そこでは「もみほぐし」とか言ったりしているんですけど。
ようは「ボディーケア」とか「ボディートリートメント」っていう整体ですね。
あとは、週末にそこのお店を使ってランニングのイベントやワークショップをやらせてもらっている感じです。
訪問マッサージの仕事
「訪問マッサージ」っていうのは、具体的にどういう事をやるんですか?
高齢者によってはご夫婦だったり、お1人で住まわれている方だったり、いろいろいらっしゃるんです。
訪問マッサージは、まずピンポンを押して、「こんにちは。」って挨拶をして、中に入れていただきます。
その後、最初は血圧(バイタル)をチェックして、問診します。
「今日の体調はどうですか?」とか色々聞いて、「どこどこが痛いのよ。」って言われたら、そこを検査します。
「どうやったら痛みが出るか?」とか「どういう動きでどうなってしまったのか?」っていうのを診て、そこから「おそらくこういう事で、今痛みが出ているんだと思います。」っていう話をします。
そのあと、「じゃあ、マッサージでそこの部分をケアしていきましょう。」という感じで、マッサージをします。
だいたいピンポンをして、「お大事にしてください。」って言って外に出るまで、30分ぐらいですね。
あ、そんな早いんですか?
結構短いですよね。そうしないと全てのお宅を回れないんですよ。
ちなみに今のは保険適用の方の場合です。実費の人は逆に結構長いです。
保険適用だとそんなに長くは時間を取れないので、30分単位で回っていくっていう感じですね。でも、実際はもうちょっと長くなっちゃいますけど。
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保険適用の仕組み
「保険適用」ってどういう仕組みなんですか?
医療保険なんですよ、基本は。
国民健康保険だったり、高齢者の方なので「後期高齢者医療保険」なんですけど、その保険を使って訪問マッサージを受ける。
訪問マッサージを受けるためには、医師の同意書が必要なんですよ。
かかりつけの病院に行って、先生に「訪問マッサージを受けたいので、同意書を書いてください。」って書いてもらうんですね。
その「同意書」っていうのは、最大5部位。
「躯幹」って言って、胴体、右上肢、左上肢、右下肢、左下肢で最大5部位なんです。
先生が患者さんがどこをやってほしいのかを聞いて、問診をして丸をつける。
医師の同意書ができて、初めて保険適用になります。
私ども鍼灸マッサージ師は、その同意書をもらって「療養費支給申請書」という行政に提出する書類を作成し、それと一緒に同意書を提出します。
そうすると、例えば後期高齢者だと1割負担なので、1割は患者さんから頂きます。
1ヶ月分まとめて請求するので、1ヶ月分の1割だけ頂きます。
それで、申請書の審査が通った後に、行政から9割部分が入ってくるっていう仕組みです。
時間と金額は関係してくるんですか?
そうなんです。
実費に関しては「60分でいくら」みたいな、普通のマッサージ屋さんと一緒の仕組みで設定しています。
ただ、出張料は込みなので割安だと思います。
同意書を取得するのが手間とか、「実費でいいわ。」っていう方には、実費で契約させてもらっています。
マッサージ屋との違い
マッサージ屋さんとの違いって何なんですか?
一番大きな違いは資格があるかないかですね。
僕が持っている「鍼灸マッサージ師」という資格は、国家資格なので。
「鍼灸師」と「按摩マッサージ指圧師」っていう2つの資格を持っているんですけど、整体院系のお店は民間で発行している資格で運営しているので、国としては認められていないですし、守られてもいないんですね。
「民間の資格を持っている人達だけで店舗を運営する」っていうのは、国的には問題ないんですか?
「マッサージ」と謳わなければ問題ないです。
だから、一般的には「もみほぐし」とか「ボディーケア」って謳ってますよね。
「マッサージ」って謳えるのは鍼灸マッサージ師だけで、それ以外の人は「マッサージ」という言葉を使ったらNGなんです。
ただ、鍼灸マッサージ師でも、広告の制限みたいなものがあるんです。
だから、「マッサージします。」と書いている治療院はないと思います。
でも、治療院名はちゃんと出せるんですよ。「○○マッサージ院」とか「○○治療院」とか。「治療院」が多いですね、おそらく。
あんまり「『マッサージ院』とか『治療院』に行こう。」っていう感覚がないんですよね。
一般の人ってそうなんですよね。鍼灸マッサージ師の資格を持っている人が少ないのもあるかもしれません。
あとは、接骨院系が多いですね、僕らみたいな鍼灸マッサージ師の資格を持っている人が就職したり勤めたりしているところは。
接骨院に行けば、鍼灸マッサージ師の資格を持っている人がいるところはいると思います。
基本的に接骨院・整骨院の先生が持っている資格は「柔道整復師」という国家資格です。
柔道整復師?
「柔道整復師」は、骨折した時の処置とか、脱臼した時にはめる事ができる人です。
接骨院や整骨院ではマッサージをやってはいけないんですけど、マッサージに近いようなことをやっているところもあります。
ただ、「マッサージ」とは謳っていないので、グレーな部分なんですけど。
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鍼灸マッサージ師に治療をしてもらうには
どうすれば、鍼灸マッサージ師の資格を持っている人に治療をしてもらえるんですか?
「鍼灸マッサージ師の資格を持っています。」って謳ってるところに行くしかないですよね。
自分の街になければ、どこか違う街に…
でも、ちゃんとした治療院があるところはありますし、ちゃんとやっているところはちゃんとやっているので。
結局、保険でやっているところが少ないので、ほとんど実費ですね。
なんで保険適用できるのにしないんですか?
保険適用の手続きが面倒くさいんですよ。
こっちも面倒くさいし、患者さんにも手間を取らせてしまうので。
例えば齋藤さんのマッサージを受けたい場合、どうすればいいんですか?
現状では、杉並区か浦和に住んでいるか、近くの市区町村の方でないと難しいんです。
隣接の区であれば、なるべく行けるようにしています。むしろ、今隣接の区にも行っているので。
ただ、制度上あまり遠くまで行くことができないんです。
自分が申請を出している場所から、16km以上離れてしまうとダメなんですよ。「16km」っていう決まりがあるんですよね。
16km以上離れると、理由をつけないといけないんです。理由をつけても、行政はなかなか理由を認めてくれない傾向にあります。
なるほど。なかなか厳しいんですね。
それと、ビジネス的にもあまり遠い距離は難しいんです。
申し訳ないですけど、今は1人でやっているので。
保険適用の場合だと、時間と移動距離で考えさせてもらう可能性があります。実費でしたら、なるべく融通は聞かせます。
ビジネスとして移動距離が遠いと時間が限られているので、難しいんですよね。
「訪問マッサージ」と「訪問介護」の違い
「訪問マッサージ」と「訪問介護」の違いって何ですか?
「訪問介護」に関しては、寝たきりの人のトイレとか、お風呂とか食事とか、ちょっと症状が重い人を訪問して介護するんです。
家族とか同居人の方ができない世話を介護士が訪問して代行するんです。
「訪問マッサージ」はマッサージをしに行くので、やっている事は結構違いますよね。
でも、こういう仕事に携わっていないと、なかなか分からないですよね。
他にも「訪問リハ」っていうのもありますから。「訪問リハ」は「訪問リハビリ」のことです。
「訪問リハ」はどちらかというと「訪問マッサージ」寄りで、高齢者に限らず、小児麻痺の方のリハビリなどを行います。
そして、高齢者の方が機能回復とか痛みの緩和を行うのが「訪問マッサージ」です。
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